北海道大学、東京工業大学、株式会社digzyme、アデレード大学、コペンハーゲン大学の国際共同研究グループは、卵を産む哺乳類であるカモノハシとハリモグラの高精度な全ゲノム塩基配列の決定に成功し、その進化の過程を明らかにした。
カモノハシはオーストラリア東部の河川や湖沼に、ハリモグラはオーストラリア全土とパプア島の陸地に生息。どちらもメスが卵を産み、孵化後母乳で新生児を育てる単孔類で、哺乳類が卵を産む爬虫類的な祖先からいかに進化したかを示す貴重な存在だ。解明のため34の国際共同研究機関の研究者が全ゲノム解読を実施し、高精度解読に成功した。
解析により、まず進化的な分岐年代を推定。単孔類と胎生哺乳類の祖先の分岐は1億8760万年前、カモノハシとハリモグラの分岐は5460万年前と推定された。また、染色体が30対あった全哺乳類の共通祖先から、156回の複雑な染色体再編成により、カモノハシの21対の常染色体と5対の性染色体が生じたと推定できた。
日本の研究グループはカモノハシとハリモグラの化学感覚(味覚、嗅覚など)の進化に注目。その結果、両種は哺乳類全体でも進化が特別で明確な違いがあった。まず、ハリモグラには苦味受容体遺伝子がカモノハシの半分未満の3個のみだが、嗅覚受容体遺伝子は693個もありカモノハシの倍以上あった。カモノハシにはフェロモン受容体遺伝子が262個あったがハリモグラにはほとんどなかった。
これは、ハリモグラが匂いを頼りに餌となるアリやシロアリを探していることや、水中生活者のカモノハシがフェロモンを用いて効率よく仲間とのコミュニケーションや繁殖をしている可能性を示し、哺乳類のゲノムと生態を結ぶ重要な知見だとしている。
論文情報:【Nature】Platypus and echidna genomes reveal mammalian biology and evolution