藤田医科大学医学部の太田充彦准教授、李媛英助教、八谷寛教授と国立がんセンターの研究グループががん既往のある労働者とない労働者の心身の状態を調べたところ、既往者の方が主観的不健康や身体機能の低下を訴える人が多いことが分かった。研究グループはがんを克服して就労復帰したあとも継続的なサポートが必要としている。
調査は2011~2016年、秋田県、長野県、高知県など次世代多目的コホート研究対象地域に住み、この研究に同意した40~74歳の男女約11万4,000人のうち、労働者であると答えた40~65歳の約5万4,000人の回答を分析、がん既往のある労働者とない労働者の心身の状態を調べた。
その結果、がんの既往歴を持つ労働者は男性977人、女性1,267人いたが、がん既往歴がない労働者に比べ、主観的不健康や身体機能の低下を訴える人の割合が統計学的に有意に高いことが分かった。その一方で、抑うつ症状を持つ人の割合に違いは見られなかった。幸福感を持つ人の割合は女性に差が出なかったものの、男性はがん既往歴を持つ人の方が高かった。
先行研究でがん治療がさまざまな身体機能を低下させることが明らかになっており、研究グループはがんの既往歴を持つ労働者がそれを実感している結果が出たとみている。男性のがん既往者に幸福感を持つ人が多いのは、がんから生き延びて就労に復帰したことに満足しているからではないかと分析している。