経頭蓋直流電気刺激(Transcranial direct current stimulation:tDCS)と有酸素運動を併用すると、より早期かつ大きな鎮痛効果が得られることを、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの研究者らが明らかにした。
中等度の運動強度(軽いジョギングくらいの運動強度)で10~30分間の有酸素運動を行うと、痛みの感受性を低下させる「疼痛抑制メカニズム」がはたらき鎮痛効果を得られることが知られている。しかし、線維筋痛症や慢性疲労を伴う一部の慢性疼痛患者では、逆に痛みが増幅してしまうことが指摘されている。
一方、tDCSは頭皮の上から脳に微弱な電流を与える非侵襲的脳刺激法の一つで、一次運動野にtDCSの陽極刺激を行うことで鎮痛効果が得られる。さらに、tDCSは単独で使用するよりも他の介入法と併用することで効果が高まるとの報告があることから、本研究では、tDCSと有酸素運動の併用による鎮痛効果の経時的変化を検証した。
その結果、tDCSと有酸素運動を併用した場合、運動開始後5分経過の時点から、痛みへの感受性低下を示す圧痛閾値(PPT)変化率がtDCSのみの場合および有酸素運動のみの場合と比較して有意に増加した。運動開始後20分経過時点におけるPPT変化率は、tDCSのみの場合に40.7%、有酸素運動のみの場合に51.5%であったのに対し、tDCSと有酸素運動を併用すると83.4%だった。運動終了後15分経過の時点でも、併用条件ではPPT変化率が有意に高い状態に維持されていた。PPTが増加するほど痛みを感じにくくなったことを意味するため、tDCSと有酸素運動の併用により、それぞれを単独で行うよりも早期かつ大きな鎮痛効果が得られることが示された。
本成果は、有酸素運動で疼痛が増強されてしまうような症例や、体力が不十分な症例に対して、tDCSと有酸素運動の併用による介入が有用であることを示唆している。