千葉工業大学、株式会社アドバンジェン、北海道医療大学、横浜国立大学のグループは、脱毛を誘導する因子「FGF5」のはたらきを阻害する人工RNA(RNAアプタマー)の開発に成功した。
線維芽細胞増殖因子の一つであるFGF5タンパク質は、毛周期において成長期から退行期へのスイッチとなることがわかっている。成長期の終わりに、外毛根鞘とよばれる部位でFGF5が産生され、これが毛乳頭細胞にあるFGF5受容体に結合することで脱毛シグナルとなり、脱毛が起こる。
一方、アプタマーは、標的とするタンパク質に結合してその働きを阻害することのできる核酸分子であり、次世代型分子標的薬として注目されている。本研究では、FGF5のはたらきを抑えるRNAアプタマーを開発することで、効果の高い育毛剤を開発することを目指した。
研究グループは、SELEX法(試験管内分子進化法)とよばれる手法を用いて、7種類のRNAアプタマーを取得することに成功した。これらは、FGF5と非常に強く結合し、FGF5がFGF受容体に結合することを阻害するので、FGF5によって誘導される細胞増殖が効果的に抑制されることが確かめられた。
また、このRNAアプタマーは、FGF5に対して特異的に結合する(FGF5以外のFGFには結合しない)ため、人体に投与した際、他のタンパク質に作用しない、つまり副作用が少ないと考えられるという。以上から、このアプタマーは、育毛剤として非常に高いポテンシャルを持っていることが明らかとなった。
FGF5は、一部のがん細胞においてはがん化を促進するとの報告もある。今回開発されたRNAアプタマーは、新たな育毛剤としてだけでなく、FGF5に関連した疾患の新たな治療薬となる可能性も期待される。