日本で2人目のノーベル文学賞受賞者となった作家の大江健三郎氏の自筆原稿が、母校の東京大学文学部に寄託された。自筆原稿のほか、校正ゲラなど合計約50点で大江氏の原稿がまとまった形で公的機関に寄託されたのはこれが初めて。
東京大学によると、寄託された自筆原稿はこれまで自宅や出版社の講談社、文藝春秋に保管されていたもので、合計1万枚を超え、コレクションとして屈指の規模となる。1957年の芥川賞候補作品「死者の奢り」、1964年の「空の怪物アグイー」といった初期作品から、1982年の「雨の木」、1993~1995年の三部作「燃えあがる緑の木」など中後期の作品も含まれている。
講談社刊の「大江健三郎前小説」が完結したのを受け、自筆原稿などをしかるべき場所へ移し、文学と学術の発展に寄与したいという思いがあり、今回の寄託となった。東京大学文学部は研究資料としての公開を考えており、大江健三郎文庫(仮称)を設立する方針。同文庫は大江氏の作品を中心に日本近代文学の研究拠点と位置付けている。
大江氏は1959年、東京大学文学部フランス文学科を卒業した。在学中から作家としての活動を始め、1994年に川端康成氏に次ぐ日本で2人目のノーベル文学賞受賞者になった。誌的な力で生と神話を凝縮させた想像世界を作り、現代人の苦境を描いているとして国内外で高い評価を受けている。
参考:【東京大学】ノーベル賞作家大江健三郎氏の自筆原稿、東京大学文学部に寄託~「大江健三郎文庫(仮称)」設立へ~(PDF)