2020年度「第20回石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」では、受付期間内に応募・推薦された147作品の中から「大賞」3作品および「奨励賞」3作品を決定した。

 大賞を受賞したのは「公共奉仕部門」の2作品と「草の根民主主義部門」の1作品。「公共奉仕部門」の大賞、一つ目は、西日本新聞の【かんぽ生命不正販売問題を巡るキャンペーン報道】。多くの人が信頼を寄せている日本の郵便局が、保険料の二重払いや払い込み済みの保険を解約させるなど、詐欺まがいの方法で高齢者などを騙していたという実態を内部告発に基づき、西日本新聞の記事が明らかにした。放置されれば被害がさらに広がっていた可能性もあり、報道の意義は大きいと評価された。

 二つ目は、毎日新聞ニュースサイト、毎日新聞出版の【「桜を見る会」追及報道と『汚れた桜「桜を見る会」疑惑に迫った49日』の出版】。野党議員の国会質問から約1年後に安倍晋三前首相の公設秘書の政治資金規正法違反を認めさせるうえで、毎日新聞統合デジタル取材センター「桜を見る会取材班」の寄与は大きい。ネット報道らしいソーシャルメディアの活用や、書籍『汚れた桜』の刊行イベントの記事化など、常に市民社会を巻き込んで世論の「輿論(Public Opinion)」化に努め、95本もの記事を発信して告発を続けた。継続的な報道の力を示した例として公共奉仕部門の大賞に値すると評価された。

 「草の根民主主義部門」の大賞は、三上智恵さんの書籍『証言沖縄スパイ戦史(集英社新書)』。護郷隊と呼ばれた秘密戦の部隊に配された元少年ゲリラ兵たち21人の証言、その護郷隊を率いた陸軍中野学校卒の2人の隊長の実像、密告によりスパイと目された住民の虐殺、それに関わった人々の肖像や証言などに加え、沖縄本島で見つかった秘密戦に関する書類から、中野学校出身者42名が投入された沖縄における国内遊撃戦の思想を明らかにした。加害者と被害者が70年以上重ねてきた戦後の貴重な歴史的記録であり、現在の日本へ警鐘を鳴らし問いかける優れたノンフィクションであることが評価された。

 建学以来多くの優れた人材を言論、ジャーナリズムの世界に送り出してきた早稲田大学。先人たちの伝統を受け継ぎ、この時代の大きな転換期に自由な言論の環境を作り出すこと、言論の場で高い理想を掲げて公正な論戦を展開する人材を輩出するという趣旨に則り「石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞」を創設。賞の名称には、ジャーナリスト、エコノミスト、政治家、早稲田大学出身の初の首相として活躍した石橋湛山の名を冠した。

参考:【早稲田大学】2020年第20回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」発表

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