東京医科大学公衆衛生学分野の福島教照講師らは、新型コロナウイルス感染症アウトブレイク時における一般市民の予防に関する考えと行動に関するインターネット調査を実施。職場勤務と在宅勤務における中高度身体活動時間について報告した。

 コロナ禍で在宅勤務といったテレワークが推進され、職場で働くのが当たり前であった労働者にとって、自宅が新たな職場の一つになった。仕事中の長時間の座位時間や少ない中高度身体活動時間は労働者の健康に悪影響を及ぼすが、職場勤務と在宅勤務ではどのくらい仕事中の座位時間や中高度身体活動時間が異なるのかほとんど報告されていない。

 そこで研究チームは、職場勤務者と在宅勤務者における仕事中の座位時間と中高度身体活動時間の違いについて定量的に明らかにするため、在宅勤務が新しい生活様式として定着するようになった2020年7月28日~8月2日に関東地方在住の20歳から79歳の男女2,362 人にアンケート調査を実施した。

 その結果、在宅勤務の労働者は職場で働く労働者に比べ、職種や勤務時間の違いなどを調整しても仕事中に座っている時間は76分ほど長く、一方で仕事中に歩行など身体を動かす(中高強度身体活動)時間は27分短いことがわかった。

 長時間の座位行動および30分以上持続して座り続ける状態が多いことは死亡率の増加、糖尿病および心血管疾患の新規発症といった健康リスクになることが報告されており、在宅勤務では座りすぎによる健康影響が強く懸念される。また、在宅勤務で身体を動かす時間が短くなったのは、通勤で歩くこと(中高度身体活動)がなくなった影響を思い浮かべる場合が多いが、本研究によって仕事時間中にも中高度身体活動の低下が起きていることが明らかとなった。

 現在、感染拡大を抑制するためテレワークが推進されているが、並行して健康リスクである長時間の座りすぎや身体活動不足への対策も講じることが必要といえる。

論文情報:【Journal of Occupational Health】Associations of working from home with occupational physical activity and sedentary behavior under the COVID-19 pandemic

東京医科大学

大学ジャーナルオンライン編集部

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