食品中のポリフェノール含有量を簡便に測定する手法を、芝浦工業大学のグループが開発した。
ポリフェノールは、これまでに約8,000種類が確認されている植物由来の成分で、多くの食品に含まれ、抗ウイルス・防菌・防カビ作用を持つことでも知られる。中には新型コロナウイルスを無害化・不活化するものや、がんや心疾患の低リスク化、脂肪を分解する作用が確認されているものもあり、その健康効果から食事による摂取が推奨されるが、ポリフェノールのデータベースは欧米の研究データが中心で、アジアの植物性食品や食習慣が網羅されていないという。アジアの食生活に基づいたポリフェノールのデータベース構築による、食品中のポリフェノール含有量の認知拡大が課題だ。
こうした中、本グループでは、カーボンナノチューブ電極を用いた電気化学分析で、これまでより短時間・低コスト・簡易にポリフェノール成分を特定し含有量を測定する技術を確立した。ナノ材料であるカーボンナノチューブの機能性表面電極を利用して、サイクリックボルタンメトリー(CV)法により電位と電流を測定する。測定結果の波形から成分を特定し、電流の量で成分の量を測定できる。従来法である高速液体クロマトグラフィー(HPLC)では、高価な大型装置と熟練の技術が求められる上に計測に1時間程度の時間がかかっていたが、本手法では、その20分の1の3分程度で結果が得られる。測定誤差も、HPLCとの比較で±5%にとどまった。
HPLCより安価で簡便な手法の確立により、食品中のポリフェノール含有量の定量化が進むことで、ポリフェノールの効果的な摂取が促進されるとみられる。新型コロナウイルスを含む感染予防をはじめ「健康長寿社会の実現」への貢献が期待される成果である。