台湾中央研究院の野澤洋耕博士らと琉球大学熱帯生物圏研究センターの高橋俊一教授との国際共同研究チームは、サンゴが月光によって産卵を抑制され、太陽光と月光を受ける時間帯の間に「光のギャップ(暗闇の時間帯)」が生じることが産卵日を決定する合図となっていることを、世界で初めて明らかにした。
サンゴは初夏の満月の時期に同調して一斉に産卵するが、どのように満月の時期(月齢)を把握し、産卵日を同調させているのかは不明だった。今回、国際共同研究チームは、台湾緑島のキクメイシと呼ばれるサンゴを用い、月光(フィールド実験)や月光を模した夜間の光(室内実験)が産卵日にどう影響するかを調べた。
これまで満月の時期の月光が産卵を誘導すると考えられていたが、実験の結果、月光が産卵を抑制する(止める)働きをしていること、および夜間の前半の光が産卵抑制に有効であることが示された。また、満月の時期の同調産卵は、月齢で月の出時刻が変化することに関係していた。満月の日までは太陽光と月光が連続し、満月の日以後は太陽光と月光の間に光のギャップ(暗い時間帯)が出現するため、月光の産卵抑制効果が失われて産卵が誘導されることが分かった。
満月の時期に同調産卵するのはサンゴだけでなく魚などでも見られる。今後は、「産卵の合図」の普遍性と多様性について明らかにし、光のギャップという「産卵の合図」がどのようなメカニズムで産卵を誘導するのか、また、どのような遺伝子の発現が変化するかに関しても研究を進め、同調産卵機構の全容を明らにしたいとしている。