名古屋大学大学院の杉浦英志教授らの研究グループは、愛知県三河青い鳥医療療育センターと共同で、小学校1年生児童を対象に、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の前後の「身体機能」の違いを運動器健診で調査。緊急事態宣言後の方が、「バランス機能」は低く、「体脂肪率」は高い結果となり、「転倒」と「肥満」のリスクが高くなることを明らかにした。
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の前後の児童の「身体機能」の違いについて、直接測定して調査した研究は世界的にも少なく国内では見当たらない。そこで、研究グループは緊急事態宣言による活動制限が児童の身体機能(身体が持つ能力)に与える影響を調査した。評価項目は体脂肪率・片脚立位時間・握力・歩容・1か月間の転倒回数とした。
研究(2018年12月~2020年12月)では、運動器健診に参加した6~7歳の児童110名(男児53名、女児57名)を対象とし、身体機能を測定して結果を比較した。
その結果、緊急事態宣言後の児童は、宣言前の児童よりも「バランス機能」が低く、「体脂肪率」が高かった。また、緊急事態宣言後の児童は「バランス機能」の低下・「転倒回数」の増加・「体脂肪率」の上昇が関連していることが認められ、特に「転倒リスク」は、宣言前の児童の1.899倍だった。さらに、宣言前の児童よりも「身体活動時間」は長いが、運動の質が十分に担保されていない可能性が示唆された。
今回の研究成果は、緊急事態宣言解除後の児童の身体機能低下の予防につなげるための重要な情報源になる。特に「バランス機能」と「体脂肪率」の評価が重要であり、機能向上のため質が担保された適切な運動プログラムの提供が課題だとしている。