総合地球環境学研究所と九州大学の研究により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック化に伴い発出された緊急事態宣言は、法的拘束力を持たないにもかかわらず外出抑制効果があったことが示された。

 COVID-19の感染が拡大した世界の地域のほとんどでは、罰則つき、すなわち法的拘束力のある外出抑制政策がとられていた一方、日本では、法的拘束力のない自粛要請である緊急事態宣言が発出された。

 緊急事態宣言の効果を分析した先行研究では、宣言は一定の効果をあげたとされているが、宣言が効力を持つメカニズムには焦点が当たっていない。また、外出を自粛する理由として、外出することを反社会的行動とみなす世論(スティグマ、社会的烙印)や天候といった他の要因が加味されていない。そこで本研究では、どのようなメカニズムで緊急事態宣言が外出行動を抑制させたのか、そしてスティグマや天候など外出行動の意思決定に影響する他の要因を考慮した上でも、緊急事態宣言は外出行動を減少させたといえるのかを知るために、理論モデルによる分析と実際のデータを用いた実証分析を行った。

 まず、感染リスクに加えてスティグマによる心理的コストを考慮した外出自粛行動についての新しい理論モデルを構築して分析したところ、緊急事態宣言は外出抑制の効力を持つが、外出者数が相対的に多くなることやその逆も生じる可能性があり、外出抑制効果の大きさを事前予測することは困難であることがわかった。

 次に、全国的なデータを用いた実証分析では、外出行動に影響を与える他の要因をコントロールした下でも、緊急事態宣言発出下・解除後の両方で、発出前と比較して外出行動は抑制されており、抑制の度合いは発出下においてより高かったことがわかった。

 今後は、感染者に対するスティグマも考慮して分析を進め、給付金やベーシックインカムなどの政策効果や制度設計についても考察していくという。

論文情報:【Economics of Disasters and Climate Change】COVID-19 with stigma: Theory and evidence from mobility data

大学ジャーナルオンライン編集部

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