長崎大学教育学部の大庭伸也准教授と同学部学生の前田愛理氏の研究グループは3月24日、卵を守るオスは天敵のアリを物理的・化学的に排除することを発見したと発表した。
タガメの卵は水生植物などに産卵され、オスが孵化直後まで世話をする。野外では植物が多い池や沼、水田に生息するためアリが岸から植物を伝ってタガメの卵を襲うことがある。この場合、これまでオスがどう卵を守るのか分かっていなかった。
今回、研究グループは、複アリがタガメの卵を攻撃できる状況を実験的に作り、卵を保護しているオスを除去した場合と除去しない場合の卵の孵化率を調べた。その結果、オスを除去しない場合に比べオスを除去した場合はアリの捕食により卵の孵化率が下がった。また、オスが卵の上にいるときはアリが卵に近づきにくいことに加え、オスがカメムシ臭を放ちアリを追い返すことも確認された。
この研究成果は、親が子の保護をする昆虫において共通する役目がタガメにもあることを確認したとともに、臭いによる化学的防御は陸・水生を問わない防御戦略であることがわかった。このことにより、昆虫の親による卵の保護行動が進化した背景の理解に貢献する知見として評価された。