2000年度生まれの女性が20歳のときに受けた子宮頸がん検診で細胞診異常率が1999年度生まれ以前の女性に比べ、上昇していることが、大阪大学大学院医学系研究科の八木麻未特任助教、上田豊講師らの研究で分かった。HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの接種率激減が影響しているとみられる。
大阪大学によると、日本では毎年約1万人が子宮頸がんと診断され、約3,000人が死亡している。主な原因は性交で感染するHPVで、感染を防ぐにはHPVワクチンの接種が有効。日本では2010年度からワクチン接種の公費助成が始まり、高い接種率となったが、接種後に生じる多様な症状への不安から、厚生労働者は2013年、接種の積極的な推奨をやめた。
研究グループは24の地方自治体から1989~2000年度生まれの子宮頸がん検診の結果と、1994年度以降に生まれた女性のワクチン累積接種率のデータを入手、積極的なワクチン接種推奨を最初に停止された世代となる2000年度生まれの女性の状況を調べた。
その結果、62.1~71.7%のワクチン接種率だった1994~1999年度生まれの女性の細胞診異常率が3.06~4.12%だったのに対し、接種率10.2%の2000年度生まれは5.04%と異常率の数値が有意に上昇していた。
研究グループは厚労省がワクチン接種の積極的推奨をやめたことで接種率が激減したことが原因とみている。停止世代に後からワクチンを接種してもらうなど新たな対応を取らなければ、将来の子宮頸がん患者の増加が不安視される。
なお、厚生労働省は12月23日の第28回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において、1997年度から2005年度に生まれた9学年の女性に対し、2022年4月から2026年3月までの3年間、HPVワクチンのキャッチアップ接種を実施する方針を示した。HPVワクチンの積極的な勧奨の差し控えにより接種機会を逃した女性に対して公平な接種機会を確保するため、情報提供と周知に努めるという。