京都府立医科大学大学院の八木田和弘教授らの研究グループは、胎児の発生過程に現れる二つの生物時計(分節時計と体内時計)の関係性に注目し、発生前半に「体内時計が抑制されている」ことが正常な胎児の発生に必要であることを明らかにした。
生体機能に約24時間周期の生体リズムを与える体内時計は地球上のほとんどの生物が備えている。しかし、哺乳類ではその発生過程で体内時計が強く抑制され、マウスなどの胎児では出生直前まで見られないが、その理由は不明だった。研究グループは、この哺乳類の「遅すぎる体内時計の発生」の謎を明らかにするため、体内時計がない時期に見られる「体節形成」現象との関連性に注目し、マウスを用いて研究を行った。
体節形成は脊椎動物の正常な発生に不可欠で、これを制御する機構が「分節時計(体節時計)」だ。分節時計は体内時計と異なり、マウスの場合は約2時間周期のリズムを刻む。研究により、体内時計を構成する時計遺伝子(Per1)が、分節時計の主役である遺伝子(Hes7)とゲノム上で隣接していることが判明し、体内時計と分節時計の関係性が示唆された。
そこで研究グループは、胎児を形づくる体節形成期を人工的に再現した胚オルガノイド(人工擬似胚)を用いて、体内時計の鍵因子CLOCK/BMAL1を体節形成期に強制的に発現させた。その結果、分節時計に干渉し2時間周期のリズム制御を破綻させ体節形成を阻害することが分かった。
これにより、発生過程において器官形成期の終了後に体内時計の発生が開始されることは、正常な発生プロセスにとって極めて重要な意義があるとしている。今後、胎児の体内時計生活リズムが胎児に与える影響などの理解が進むことが期待される。