慶應義塾大学のパトリック・サベジ准教授らの国際研究チームは英米民謡と日本民謡約1万曲を分析し、メロディーが進化することを示し、分子遺伝学手法を用いて、民謡のメロディーが文化的環境に応じて予測可能な変化をすることを発見した。

 現代文化の多様性の理解に進化論が注目されている。民俗音楽は文化的に普遍的だが、長い間に個人間で繰り返し伝わる変わりやすいものでもある。研究チームは、日本と英米民謡の音楽を分析し、異なる文化環境においてメロディーが類似した進化をたどるかどうかを検討した。

 研究チームは、「スカボロー・フェア」や「ソーラン節」などの有名な民謡を含む10,062曲(英米民謡4,125曲、日本民謡5,937曲)のメロディーを五線譜の文字列に手作業で変換し、遺伝子配列に類似した音列を作成。分子遺伝学用に設計されたアラインメントアルゴリズムを用いて、詳細分析に使用可能な328組の関連性の高いメロディーを特定した。

 さらに、録音間での曲の変化を観察。その結果、曲のリズムに重要な役割を果たす音符は、純粋に装飾的な音符よりも変化しにくく、曲の最後の音符に次いで強調された音符も変化しにくいと判明。一方、強調のない音符や装飾的な音符は最も変化しやすく、また、音符は置き換えではなく追加や削除される傾向があり、置き換えの場合は隣り合った音符になる可能性が高いことも分かった。

 今回、創造的な芸術形式が、生物学、遺伝学、その他の文化的領域で見られる同様の進化的メカニズムに制約されていることが明らかになった。今後は、旋律の進化に与える複数の要因の相対的な影響や、ミクロ・マクロレベルの相互作用を探る必要があるとしている。

論文情報:【Current Biology】Sequence alignment of folk song melodies reveals cross-culturalregularities of musical evolution

慶應義塾大学

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