畿央大学大学院博士後期課程の水田直道氏と森岡周教授らは、脳卒中患者の歩行時における時間的非対称性が筋シナジーと関連することを明らかにした。
多くの脳卒中患者は歩行能力が低下してしまうが、これには、下肢筋活動パターンの異常が影響すると考えられている。歩行時における下肢筋活動パターンは、多数の筋を低次元化し制御するメカニズムである「筋シナジー」によって制御されており、脳卒中患者における筋シナジー障害が歩行能力に影響すること、筋シナジー障害と歩行時の運動学的特性が関連することも、本研究者たちによって明らかとされている。
しかし、筋シナジー障害と歩行時の時間的特性の関係性は明らかになっていなかったという。そこで、今回、脳卒中患者を対象に、歩行時にリズム聴覚刺激を併用することで時間要因を主として操作する歩行テスト実験を行い、歩行時における時間的特性と筋シナジーの関連を調べた。
リズム聴覚刺激の併用条件では、メトロノームのテンポに下肢の接地タイミングを合わせながら歩いてもらった。この条件下では、ピーク下肢屈曲角度や麻痺側単脚支持時間の増大がみられ、時間的非対称性が改善した。このとき、筋シナジーの単調性は減少していた。また、リズム聴覚刺激を併用した際における麻痺側単脚支持時間およびケイデンスの変化量(快適歩行条件との差分)は、筋シナジーの単調性の変化量と相関関係が認められたとしている。
以上から、歩行時における時間的非対称性と筋シナジーは関連することが明らかとなった。今後は、筋シナジー障害の神経メカニズムの解明や、脳卒中患者がたどる筋シナジー障害の回復過程を明らかにすることなどを目指すとしている。