東京農工大学の研究グループは、電子デバイスに広く用いられている半導体材料である「シリコン」の表面に高強度のフェムト秒レーザーパルスを照射することにより、電子の集団振動現象~表面プラズモンポラトリン~が発生することを世界で初めて観測した。
表面プラズモンポラトリン(以降SPPとよぶ)は、金属に光を照射することにより自由電子が集団振動して起こるよく知られた現象。周囲に強力な電場を発生できるため、高感度光検出器や高効率太陽電池など様々な応用に利用されている。
一方で、自由電子をもたない絶縁体や半導体ではSPPは発生できないとされてきた。1980年代に「高強度のレーザー光を照射すると固体表面が金属化してSPPを発生できる条件がある」という理論が唱えられていたものの、実証には至っていなかった。
今回、研究グループはシリコン製の回折格子にフェムト秒レーザーパルス(1フェムト秒以上1ピコ秒未満の間にのみ存在するレーザー光)を照射する実験を行い、シリコンと大気の境界面でSPPの発生を初めて捉えた。この現象を利用すれば、レーザー光を照射するだけでさまざまな固体表面にSPPを発生でき、電子の周囲に発生する強力な電場によって固体表面を直接削り取ることができる。従来のレーザー光を使った加工技術はマイクロメートルサイズが最小限界であったが、本成果によりこれまでにないレーザー「ナノ」加工技術の実現が期待できるという。