京都大学大学院理学研究科の佐藤雄貴大学院生らの研究グループは、銅酸化物高温超伝導体が超伝導状態になる過程で現れる特異な金属状態を解析。その結果、電子が集団的な自己組織化によって配列し、ある種の液晶状態が作られていることを発見した。今回の成果は東京大学、九州産業大学、韓国科学技術院、ドイツ・マックスプランク研究所との共同研究によるもの。
超伝導は、ある種の物質を極低温まで冷却すると電気抵抗が完全にゼロになる現象だ。銅酸化物では-240℃よりも高温で超伝導を示す物質が次々と発見されている。この銅酸化物高温超伝導体では、超伝導を起こすよりも高温で、一部の特定方向の電子が消失する特異な金属状態が現れる。この状態(擬ギャップ状態)に関して決定的な結論は出ておらず、現代物理学上の最重要課題の一つである。
今回の研究では、従来の数千倍高い感度で精密測定が可能な方法(高感度磁気トルク測定)を用い、代表的な銅酸化物高温超伝導体(YBa2Cu3Oy)の純良単結晶を対象に擬ギャップ状態での磁気的性質を調べた。その結果、擬ギャップ状態では物質の磁気的性質が方向(0°方向と90°方向)によって異なり、電子集団が自発的に配列することで空間的な非対称性をもった新しいタイプの秩序状態へと急激に変化していること(相転移現象)が明らかになった。このような電子状態は電子ネマティック相と呼ばれる。
擬ギャップ状態への変化が電子ネマティック相への相転移であることを明らかにしたのは今回が初めてであり、高温超伝導現象の解明に向けた重大な指針となる。今後、電子ネマティック相と高温超伝導の発現機構との関わりについては大きな議論を呼ぶことが予想される。