東京大学と慶應義塾大学の研究グループは、手で触れる空中ディスプレイ向けに3次元空間を飛び回るLED内蔵のミリメートルサイズの発光体を作製することに成功した。「空中移動する小型電子回路内蔵発光体」の実現は、世界初の成果。ゲンジボタルの学名より「ルシオラ(Luciola)」と名付けた。
これまで、物体の空中浮遊・移動技術として「超音波集束ビーム」が用いられてきた。装置内に超音波スピーカーを多数配置し、装置内の空間の1点に超音波ビームの焦点を集める。この焦点に物体を差し入れると物体が空中浮遊し、焦点を動かすと物体をミリメートル単位の高精度で空中移動が可能だ。しかし、重くなると浮遊しないため、これまで電子回路や電池は搭載できなかった。
そこで今回、エネルギー供給技術として「無線給電」を用いた。発光体の近くに設置した給電用コイルから発光体内蔵の受電用コイルに無線で電力供給を行った。また、新規に開発した1mm四方のICチップに全ての電源回路を集約して小型・軽量化を実現し、直径4mmの半球形状で、重さ16mgの空中移動する発光体の作製に成功した。
手で触れる空中ディスプレイの実現に向けた発光画素のデモとして、空中の位置に応じてLEDを点灯・消灯して3次元空間内に文字や図形を表示することや、読者の視線の動きに合わせて本の上の空中を移動するマイクロ読書灯を可能にした。
今後は、表現力向上のために発光物体の個数増加による発光画素の多点化に取り組む予定。さらに、空中移動可能な小型のセンサーノード(センサーネットワークを構成する小型の機器)としてIoT分野へ展開する研究に取り組むとしている。