名古屋大学大学院工学研究科の三宅大輝博士後期課程学生、竹岡敬和准教授らの研究グループは、血液と接触する医療器具などに利用される血液適合性ポリマー(※1)に大きさ100ナノミリ(ナノは10億分の1)の微粒子を高濃度に導入することで柔らかいのになかなか切れない生体適合性材料開発に成功した。将来、人工血管や人工臓器への応用が期待される。
名古屋大学によると、血液適合性ポリマーのPMEA(※2)は体外式膜型人工肺など血液と接触する医療器具に広く使用されているが、柔らかくて粘着質のため、成形が難しい難点を持っている。開発された新材料は光造形式3Dプリンターで自由自在に成形が可能なのに、柔らかくてゴムのような弾性のしなやかで強靭な特性を持つ。
この特性は生体軟組織に似ている。研究グループがそのメカニズムを解明することにより、人工血管などへの応用開発に道が開いた。血液適合性評価の血小板粘着試験でもPMEAとそん色ない好結果が出ている。
研究結果は11月15、16日に東京都江戸川区のタワーホール船堀で開かれた第31回ポリマー材料フォーラムで発表された。
※1 ポリマー 複数の単量体が結合して鎖状や網状になった化合物。高分子、重合体とも呼ばれる
※2 PMEA ポリメトキシエチルアクリレート。表面上で血漿タンパク質の吸着、変性が少なく、体外式膜型人工肺のコーティング剤などに使用される