東京大学のJia Liu(ジア・リウ)特任准教授を中心とする国際研究チームは、COVID-19の流行は、天文学の研究にプラスとマイナスの両方の影響を与えたことを明らかにした。全体的に研究論文の数は増加したが、この分野に入る研究者や若手研究者の数は減少。また、どの国の女性天文学者も平均して男性の研究者よりも生産性を高められなかった。
研究チームは、研究者に対するパンデミックの影響を調査するため、1950年以降の天文学の出版物の記録を120万件以上ダウンロードし、未公表の論文著者の性別や国を割り出した。その結果、年間の論文数から見ると天文学分野の成果は増えていた。COVIDがもたらした通勤・出張時間の短縮、勤務形態の柔軟性・バーチャル技術の向上などが科学研究に有利に働いた可能性があるとしている。
さらに、各研究者の論文の平均件数を集計すると、ほとんどの国で個人の生産性が向上していた。一方、新規の研究者の数は、ほとんどの国で減少。これは、新しい研究者がこの分野に参入することや、若手研究者がCOVID期間中に最初の成果を挙げることに大きな障壁があるためと指摘する。
また、研究対象25カ国中14カ国で、女性が書いた論文の割合および天文学分野に入る女性研究者数は減少した。さらに、COVIDの間はどの国でも女性研究者は男性研究者よりも生産性を高められず、パンデミック前には両者が同等の生産性を示していたオランダ・オーストラリア・スイスなどでも同様だった。
今回のデータは、パンデミックが継続中のため、限られた期間の傾向を調査したに過ぎず、パンデミック中の研究論文についてのいくつかの統計量の数値的な調査はできたが、質的側面の調査はなされていないとしている。