日本を代表する哲学者、西田幾多郎の未公開資料が大規模に発見されたことを受け、石川県西田幾多郎記念哲学館が研究資料化プロジェクトを立ち上げた。哲学館、京都大学、金沢大学が連携し、修復および翻刻事業を進め、2018年3月にはプロジェクトをまとめた報告書を刊行した。
2015年秋、西田幾多郎の遺族宅で50冊のノートを含む西田の直筆の資料が発見された。西田が帝国大学選科在学時に取った受講ノートと思われる若い時期の資料も含まれ、西田の直弟子たちによる西田全集の編纂(第二版、1965年)以降の50年で最大規模の発見となった。
発見された資料は、奈良文化財研究所の協力の下修復され、その後、京都大学大学院文学研究科の林晋教授、金沢大学人間社会研究域人間科学系の森雅秀教授と連携して翻刻作業を行い、その内容が少しずつ明らかになった。
西田幾多郎は金沢の第四高等学校から京都大学へ赴任し、独創的な哲学者として活躍。西田の著書は現在では8カ国以上に翻訳され、世界中で研究されている。特に、金沢で執筆し、京都大学赴任直後に発表した『善の研究』は、日本人が書いた最初の哲学書として知られている。
今回発見された資料の中には、京都大学赴任直後、「宗教学」「倫理学」の講義ノートもあり、『善の研究』から西田がどのように思想を展開したかを解明する有力な手掛かりとなることが期待されている。
参考:【金沢大学】 西田幾多郎直筆の新たな資料を発見-石川県西田幾多郎記念哲学館,京都大学,金沢大学が連携し,修復・翻刻事業を実施-