広島大学大学院の杉浦義典准教授は、心配のようなネガティブな考えが続くこと(ネガティブな反復思考)の傾向の強い人に、片頭痛が多いことを示した。また、ネガティブな反復思考は短期的には頭痛を和らげる効果もあるが、長期的には頭痛を悪化させていることも分かった。
これまでの研究で、不安や抑うつなどの心理的な問題が一次性頭痛と関連することが示されている。しかし、ネガティブな反復思考が、非臨床群において頭痛の度合いを強めるのかは不明だった。ネガティブな反復思考は、不安や抑うつなどの多くの心理的な問題に共通の要因として近年注目されている。
今回、大学生426名(女性220名、男性204名、無回答2名)を対象に、アンケート調査(約1カ月をあけて2回)実施した。最初に測定した反復思考が、1か月後の頭痛に影響するという時間的な関係の解明も検討した。
その結果、ネガティブな反復思考の傾向が強いと、片頭痛を患うリスクが2.48倍に高まることが示された。また、ネガティブな反復思考が悪化するプロセスに注目して検討すると、初期の段階(問題になんとか取り組んでいる段階)ではネガティブな反復思考が頭痛を和らげることもある一方、より慢性化すると頭痛を悪化させることも示された。
このようにネガティブな反復思考は頭痛を悪化させるため、頭痛の慢性化につながり得る鎮痛剤の使用ではなく、反復思考を低減させる心理療法が頭痛の緩和にも有効とする。さらに、反復思考が少なくとも短期的には頭痛を緩和することから、「考えごと」をうまく用いることで手軽に頭痛に対処できるようになる可能性も期待されるとしている。