長崎大学原爆後障害医療研究所の七條和子助教、長崎大学環境科学部の高辻俊宏教授らの研究グループは、1945年8月9日の長崎原爆投下により爆心地から1キロ以内で被爆して死亡した被害者のサンプルから、プルトニウムの内部被ばくがあることを世界で初めて発見した。爆心地付近では強烈な上昇気流のため、プルトニウムが存在しないとこれまで考えられていただけに、注目を集めそうだ。

 長崎大学によると、研究グループは1973年に米国陸軍病理研究所から返還され、長崎大学原爆後障害医療研究所に保管されている650例の臓器に対し、プルトニウム放射能濃度とプルトニウムから放出されるアルファ粒子のエネルギーから吸収線量率を調べたところ、爆心地から1キロ以内で被爆した7例にプルトニウムによる内部被ばくを見つけた。

 骨髄組織の平均的な内部被ばく量が最も高かったのは、爆心地から500メートルの屋外で被爆し、68日後に死亡した女性の骨髄で0.104ミリグレイ。被爆時に体外から浴びたガンマ線や中性子線による外部被ばく線量は推定83グレイもあり、研究グループは内部被ばく量が低い値で、それ自体が人体に大きく影響するものではないとしている。
ただ、アルファ粒子が当たった肝細胞の核では1.29グレイ、血管内皮細胞核では3.35グレイと局所的に高線量を示した。

 今回の発見はこれまでの定説を覆したものだが、研究グループは貴重な少数例であり、必ずしも爆心地付近の内部被ばくの程度を代表するものではないとみている。

論文情報:【Heliyon】Autoradiographic analysis of internal plutonium radiation exposure in Nagasaki atomic bomb victims

長崎大学

挑戦し続ける長崎大学。それぞれの領域で活躍するエキスパートをめざす

長崎大学は、医学、歯学、薬学、工学、水産学、教育学、経済学、環境科学といった実学系の学部のほか、人文社会学系グローバル人材の育成をめざした多文化社会学部で構成される個性的な大学。独自のカリキュラムやキャンパス環境を展開し、学生一人ひとりが、それぞれの領域でグロ[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。