奈良県奈良市の奈良公園に生息する野生のニホンジカがコロナ禍の影響を受け、シカせんべいをもらうときのおじぎ回数を少なくしていることを、奈良⼥⼦⼤学⼈間⽂化総合科学研究科の博⼠後期課程2年の上原春⾹さん、博⼠前期課程修了⽣の⻄⼭若菜さん、北海道⼤学⼤学院⽂学研究院の⽴澤史郎特任助教、奈良⼥⼦⼤学⾃然科学系の和⽥恵次名誉教授、井⽥崇准教授と遊佐陽⼀教授からなる研究グループが突き止めた。
奈良女子大学などによると、奈良公園周辺には野生のニホンジカが1,050~1,400頭生息し、公園内で販売されているシカせんべいを与えることが観光イベントとして定着している。この際、ニホンジカはシカせんべいをねだるため、おじぎのような仕草を見せる。
研究グループは東大寺南大門周辺など奈良公園内3カ所で2015年から2021年にかけ、1カ月当たり約20頭のニホンジカを無作為に選んでおじぎ回数を観察したところ、コロナ禍前は1頭当たり平均10.2回だったのに対し、コロナ禍の最中は6.4回に減少していた。
奈良公園のニホンジカは1000年以上にわたって周囲と交流せずに繁殖してきた。このため、おじぎのような仕草は餌をもらうために、群れで発達させてきたと考えられている。しかし、コロナ禍の間は奈良公園を訪れる観光客が大幅に減少し、人と接触する機会も少なくなったため、研究グループはおじぎ回数が減ったのではないかとみている。
論文情報:【PLOS ONE】Impacts of the novel coronavirus SARS-CoV-2 on wildlife behaviour via human activities