日本工業大学電気電子通信工学科の平栗健史教授は、シイタケ栽培における培地として「紙」に着目し、実験の結果、使用済コピー用紙などの培地からシイタケの子実体が発生したことを確認した。
シイタケは木材に含まれる食物繊維(セルロース)を分解し、栄養源として成長する。伝統的な栽培方法としては、コナラやクヌギの原木の植菌栽培がある。これに対し30年前に発明された革命的な「菌床栽培手法」は、原木などを粉砕してブロック状に固めて植菌した菌床により、シイタケ栽培を一年中可能にした。この方法は現在広く普及しているが、収穫後に大量の廃菌床が発生することが環境問題となっている。
そこで、平栗教授はこの問題を解決するため、セルロース(パルプ)を含み、長期保存が可能な材料である「紙」を利用したシイタケ栽培を提案した。紙培地の利点は、水分を十分に吸収することができ、栽培後の処分が容易な点である。栽培に適した環境を作り出し、栽培管理も容易になる。さらに、使用済コピー用紙の再利用に繋がるとともに、廃棄処分も比較的容易なことから、環境負荷の軽減にも寄与する。
この提案は日本工業大学の「2022年度SDGs活動助成金」に採択され、今回、活動年度終了にともない報告が行われた。平栗教授の実験では和紙、使用済コピー用紙、新聞紙を用意し、シュレッダーによって裁断して水を含ませて固め、「和紙培地」「使用済コピー用紙培地」「使用済コピー用紙と新聞紙の混合培地」以上の3パターンの菌床培地を作成してシイタケ菌を植えた。その結果、どのパターンでもシイタケの子実体が発生したことが確認され、紙培地による栽培が可能であることを実証した。
この研究の応用として、スポンジに紙から生成したセルロースの粉とふすま(栄養)を直接染み込ませる「スポンジ培地」が考えられる。スポンジは、再度栄養を含ませれば再利用も可能。また、このスポンジ培地を直線上に構築すればシイタケを1列の線上に栽培することが可能となり、将来的にはロボットなどによる自動収穫作業も期待できる。
参考:【大学プレスセンター】【日本工業大学】使用済コピー用紙でシイタケ栽培!これまでにない培地原料で、画期的な栽培方法を実証