工学院大学応用物理学科の永井裕己准教授らは、低コスト・低エネルギーで成膜可能な分子プレカーサー法を用いて、高透過率・低屈折率の透明フィルムヒーターの開発を進めている。その最新成果を2023年8月24日から開催される「大学見本市2023~イノベーション・ジャパン」にて公開する。
この研究成果は、2021年に発表したガラスと同程度の透明性をもつ導電膜を応用したもの。この膜は、低コスト・低エネルギーで成膜可能な分子プレカーサー法で形成し、高い透明性、低い屈折率に加えて、高い膜均一性を示す。そのため、光の干渉が低く視認性が高い。また、材質がガラスであることから、高い表面硬度(9H以上)を示す。
寒冷環境で使用される防犯カメラのレンズなどには、クリアな視界を確保するために結露や積雪の対策が必要だが、分子プレカーサー法を用いて形成したフィルムは、他の透明フィルムヒーターと比べて高透過率・低屈折率のため、光学機器への応用に最適。道路標識や信号機などにも活用可能で、曇りや結露、凍結が緩和され、高い視認性の維持が見込める。現在、社会実装に協力できる企業を探している。
「大学見本市2023」では、実物を展示して分子プレカーサー法の原理と特徴、透明フィルムヒーターの形成までの流れやその発熱特性を詳しく説明する。
■「大学見本市2023~イノベーション・ジャパン」(主催:国立研究開発法人科学技術振興機構)
一般公開期間:2023年8月24日(木)、8月25日(金)
会場:東京ビッグサイト 南1ホール
展示:大学見本市、大学等シーズ展示「インフラ・安全・社会基盤」分野
「低温熱処理で形成した低屈折率透明フィルムヒーター」(小間番号 S-19)