広島大学の折山早苗教授らは、夜勤状況下において120分間の仮眠をまとめてとる場合と、90分間と30分間に分割してとる場合を比較し、眠気や疲労感の変化を明らかにした。
看護師において最も長時間の夜勤は16時間とされ、看護師の疲労や眠気の増加による医療安全に対するリスクの増大が危惧されている。そのため16時間夜勤に従事する看護師の多くは交代で仮眠をとるが、仮眠の取得時刻や時間は一様ではなく、眠気や疲労を軽減したり、作業能力を維持するための有効な仮眠のとり方も明らかとなっていない。
そこで今回、折山教授は夜勤時の仮眠の効果を検証するために収集したこれまでの実験データを再分析し、16:00-09:00の16時間夜勤を想定して仮眠を120分間(22:00-00:00)まとめてとる条件(単相性仮眠)、 90分間(22:30-00:00)と30分間(02:30-03:00)に分けてとる条件(分割仮眠)、仮眠をとらない条件の3つを比較検討した。
その結果、睡眠効率、睡眠潜時(入眠までの時間)には統計的な違いを認めなかったが、単相性仮眠よりも分割仮眠の方が、早朝の眠気を抑え、疲労感の低減効果にも優れていることを発見した。一方、仮眠なし条件は早朝に眠気や疲労感が増加していた。
また、睡眠状態と体温、眠気、疲労感の相関関係の分析から、総睡眠時間が長い場合に120分仮眠は疲労感が増加し、30分仮眠は眠気が増加することがわかった。また、睡眠潜時が短い場合に90分仮眠は体温が上昇し、眠気や疲労感も増加することが示された。
以上から、1回の仮眠をとるよりも2回に分割する方が眠気や疲労感の低減につながることが示されたとともに、仮眠のとり方によって体温、眠気、疲労感への影響も異なることが明らかとなった。
この成果は、看護師に限らず夜行バスドライバーや交代制勤務の工場労働者など、夜勤従事者にとって有効な仮眠のとり方を開発する基礎資料として役立つことが期待され、労働者の心身の負担軽減と安全安心な職場環境の醸成にも貢献するものと考えられる。