筑波大学医学医療系の濵野淳講師らの研究グループは、在宅で訪問診療を受けている非がん高齢者を調査。体の動かしにくさ、だるさ、食欲不振が主な苦痛症状であり、訪問診療を受けていても症状の緩和は十分ではないことを明らかにした。
国内死亡者数の約70%は非がん患者だ。入院中の非がん高齢者はがん患者より苦痛症状が多いとの外国の調査はあるが、在宅非がん高齢者の具体的な苦痛症状は不明だった。研究グループは今回、訪問診療を受けている非がん高齢者の苦痛症状を1年間調査し、症状の頻度や変化を検証した。
在宅医療を提供する国内32医療機関で、2020年1月から12月に訪問診療を受けた65歳以上の非がん患者を調査した。対象患者数785名のうち317名が12か月間の調査を完了。対象者は認知症、心不全、脳卒中などの疾患・症状に対して訪問診療を受けていた。
調査の結果、訪問診療開始時点では、体の動かしにくさやだるさに困っている人が多く、この傾向は1年間変わらなかった。食欲不振に困っている人も多いが、訪問診療開始から3か月以降の割合は減少傾向を示した。がん患者に多い痛みや呼吸困難の頻度はあまり多くなかった。訪問診療開始後12か月の時点では、体の動かしにくさやだるさに続いて便秘に困っている人が多かった。
これにより、研究グループは訪問診療を受けている非がん高齢者にも、苦痛症状を緩和する治療・ケア、支援が必要と指摘する。ただし今回、訪問診療による医療やケアの症状への影響は考慮しておらず、訪問診療を受けても苦痛症状が緩和されないとは結論できないという。今後、患者ごとの背景因子や生活状況を考慮した研究方法・解析方法の検討を進めるとしている。