物質・材料研究機構と東京大学、広島大学が太陽光発電と蓄電池を組み合わせた水素製造システムの技術的評価をしたところ、2030年ごろにも国際的競争力の高い安価な水素製造が実現する可能性があることを突き止めた。研究グループは再生可能エネルギーの主力電源化に向けた技術開発の重要な指針になるとしている。

 物質・材料研究機構によると、研究グループは太陽光発電の発電量に応じて蓄電池の充放電量や水電解装置での水素製造量を調整する統合システムを開発、その経済性を評価した。

 将来的な技術の向上も織り込み、検討を重ねた結果、2030年ごろに実用化が可能と考えられている安価な蓄電池を利用することで、1立方メートル当たり17~27円という国際的に高い競争力を持つ水素製造が国内で可能になることが分かった。

 政府は再生可能エネルギーを基幹電力の1つに位置づけているが、10~11月に九州電力管内で太陽光、風力発電の出力制御が実施されるなど、再生可能エネルギーの不安定な出力や低い年間稼働率が大きな課題に浮上している。

 その対策として再生可能エネルギーの電力で水素を製造することや、余剰電力を蓄電池に貯めるシステムが検討されているが、コスト高につながるとみられている。研究グループは今回の成果を基に、出力制御を受けても成立する太陽光発電システムの開発など社会実装に向けた研究を加速させる。

論文情報:【International Journal of Hydrogen Energy】Battery-assisted low-cost hydrogen production from solar energy: Rational target setting for future technology systems

大学ジャーナルオンライン編集部

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