固体物質の原子構造は、結晶、準結晶、アモルファスの三種類が知られているが、これらのいずれでもない第四の固体物質というべき新たな原子構造を、東北大学材料科学高等研究所/東京大学大学院工学系研究科総合研究機構の幾原雄一教授らのグループが発見した。
結晶中の格子欠陥や粒界・界面などを対象に、原子構造解析や機能特性の発現メカニズムの解明を試みてきた本研究グループは、今回、最先端の原子分解能走査透過型電子顕微鏡法を駆使し、種々の酸化物の粒界や界面近傍の原子構造を詳細に観察した。その結果、酸化マグネシウム薄膜層の解析で、ランダム性を有する特異な原子配列を発見した。
一方向には一次元の周期構造をもつ原子カラム(柱)が存在し、それらが二次元的にランダム(無秩序)に分布しているという極めて特異なこの構造は、“一次元規則結晶”と名付けられた。一次元の周期性と二次元のランダム性が共存しているとも言える一次元規則結晶の原子構造は、これまで報告されていなかった上、既知の酸化物の構造とは全く異なっており、3つの粒界が出合う粒界三重点や結晶界面の近傍など、バルク結晶に囲まれた一定の体積を有する領域に現れる構造と考えられるという。研究グループは、酸化マグネシウムだけでなく酸化ネオジウムなど他のセラミックス材料の界面近傍にもこの構造が存在することを既に確認しており、束縛された一定体積を有する空間に存在しうる構造であることが明らかとなった。
一次元規則結晶は、これまでにない新しい機能を発現する可能性があり、今後、本発見を起点として、特異な機能特性を有する一次元規則結晶性新物質の開発などにつながることが期待されている。
論文情報:【Nature Materials】Ceramic phases with one-dimensional long-range order