早稲田大学と山口大学の研究グループは、小さく透明で柔らかいマイクロメッシュ電極を開発し、市販のコンタクトレンズに搭載することで多電極網膜電位計測が可能となることを確認した。
一般的な網膜電図(ERG,Electroretinogram)計測では、全視野網膜電図といい、網膜の局所的な応答は取得できないため、空間的な差異を調べることができない。網膜の局所的な応答を測定する手法には、多電極網膜電図があるが、電極を多点配置して同時に網膜電位を計測する技術に課題があった。
そこで、本研究グループはこれまでに開発した導電性高分子を用いた電極技術により、導電性高分子と金を複合化したマイクロメッシュ電極を作製した。この電極は、80%以上の光透過性を持ち、電気伝導度、柔軟性にも優れ、微小な電位を計測することができる。
さらに、市販のコンタクトレンズ上に本マイクロ電極を貼り付け、ERG計測するために、メッシュ電極の導電性のみを維持し、リード線を局所的絶縁化することに成功した。
開発した電極の安全性評価として、ヒト由来角膜上皮細胞を用いた細胞生死判定を行ったところ、マイクロメッシュ電極上で90%以上の高い細胞生存率を保ち、十分な安全性を認めた。また、多電極レンズ(7マイクロ電極)を試作し、家兎の眼に装着させて多電極ERG計測を評価したところ、各電極からERG計測に成功し、メッシュ電極から取得される網膜電位信号が市販のERG電極と同等の性能を有することも確認した。
以上から、本計測レンズによりERGを多点計測できることが確かめられ、今後は事業化に向けた臨床試験に取り組むという。実現すれば、緑内障や網膜色素変性症に伴う盲点評価などにつながることが期待される。