新潟大学の新美亮輔准教授(認知心理学)は、社会の数十人の集団の中にマイノリティが一人でも含まれる確率を人々がどう判断するかを実験した。確率的な考えが苦手なために、実際以上にマイノリティの存在を過小視する可能性があることを明らかにした。
人間は確率的思考が苦手で、しばしば実態と異なる推論をすることが認知心理学や行動経済学では知られている。国立社会保障・人口問題研究所の全国調査では、約8割の人が同性愛者は身近に「いない」「いないと思う」と回答しているが、実際の計算では身近にマイノリティが存在する確率はかなり高くなる。例えば、人口の3%を占めるマイノリティなら、30人の中に一人でも含まれる数学的な確率は約60%(0.6≒1-0.97の30乗)となる。
研究では、集団にマイノリティ(色覚異常、同性愛者・両性愛者、外国人など)が一人でもいる確率を考えて答えてもらうオンライン実験を行った。その結果、約9割の回答が計算した確率の60%より低い確率を答え、最も多い答えは「1%」で、大幅に過小視していた。絶対音感や架空のマイノリティでも同様の結果だったため、偏見の現れとは考えられなかった。
回答を分析すると、マイノリティの人口割合が3%ならそのまま3%、あるいは30人の7%なら30×0.07=2.1人と考えている例が多かった。つまり、解決法が不明の場合の代替解決策(ヒューリスティクス)が用いられていた。これにより、過小視の原因は人間の確率判断の苦手さと、その結果としての思考の誤りと考えられた。
今回の研究成果は、多様性の理解を難しくしている認知的要因を明らかにし、解消するヒントとなり、教員研修や管理職研修に取り入れることも期待できるとしている。
論文情報:【Journal of Cognitive Psychology】Probability of minority inclusion is underestimated