IT技術の進化は目覚ましく、社会は刻々と変化している。いまや新しい技術や知見を生み出す専門人材だけでなく、IT技術をマネジメントし他分野に応用できるITエキスパートの養成が急務となっている。京都橘大学ではAI時代を牽引する人材の養成を見据えて、2021年に工学部情報工学科、23年に情報学教育研究センター、24年には大学院情報学研究科を開設。AIやビッグデータ、Iotなど情報系分野の学術研究の強化を図ってきた。さらに、2026年にはデジタルメディア学部、工学部ロボティクス学科、健康科学部臨床工学科を新設予定(※名称はすべて仮称)。最先端の情報研究・教育を起点に、9学部15学科のすべてと連携し、学生の情報技術と問題解決力の向上に力を注いで行く。
AI・IT技術を人間社会に共存させていくのは人。
そこには文化・教養の力が問われている
近年、京都橘大学には、AI(人工知能)、ソフトウェア、ネットワーク、情報セキュリティ、コンピュータグラフィクスなど各分野で日本を代表するパイオニア教員が続々と着任している。狙いは、情報教育研究拠点としての充実を図り、人材養成に寄与するためだ。
そのひとり、AI研究の第一人者である工学部情報工学科の松原仁教授は言う。
「ChatGPTに象徴される生成AIは、ディープラーニング(深層学習)という優れた技術がベースになっています。2016年に、ある文学賞への応募作品が一次審査を通過して話題になりましたが、それは人間ではなくAIが書いた作品だったからです。著作権者の許可を得て、約1000作品をAIに学習・解析させて生み出した作品でした」。実はこのAI小説のプロジェクトを率いていたのが松原教授だ。
「入賞するには四次審査までありAIはまだこの壁を突破できていません。生成AIは優れた技術ですがまだせいぜい1歳。発展途上です。しかしその進化は著しく、この流れはもはや研究者にも止められない。ただ恐れないで欲しいのは、AIが進化したとしても、完全に人間がとって変わられるわけではないということです」
自動車が発明されたとき、人々は御者の仕事がなくなる、馬車の方が安全だと反対の声をあげた。しかし自動車は圧倒的な便利さで普及し、御者の代わりに運転手や整備士などの仕事が生まれ、免許制度や走行ルールなどの整備が進んだ。
「AIでも同じことが起こるでしょう。AIもルールを作りながら使っていくことになり、人間にはAIを人間社会と共存させていく新たな役割が求められます。重要なのは“AIは人類の幸せのためにある”というのを忘れないこと。そこには、教養や文化の力が問われます」
- 1
- 2