語学教育で定評のある神田外語大学。卒業生の進路は航空会社、商社、メーカー、ホテル、旅行会社から外務省、国際機関、NGO、NPO、英語教師などあらゆる産業に及ぶ。40年に渡り、総合商社での国際ビジネスに携わってきた宮内考久学長は、『言葉は世界をつなぐ平和の礎』という建学の理念を肌で実感してきた。「グローバル社会でのコミュニケーションの重要性が増す一方、生成AIの著しい進化により語学を学ぶ環境にも大きな変化が起こっています。語学を学んだその先に何を学ぶのか、どんな能力、技術を習得するのか、そこが重要」と語る。宮内学長に話を伺った。
激動の世界だからこそ、
言葉とコミュニケーションの重要性が際立つ
「エネルギーなどの天然資源をめぐる駆け引きや領土、歴史、宗教などをめぐる攻防はますます混乱を極めています。世界中に紛争は絶えずあり、いまが平和であるとはとても言えません」。国家やさまざまな勢力が対立する構造のなか、日々の報道を見聞きしていると、対話に持ち込むことすら難しく感じるかもしれない。しかしあきらめては何も進まない。
「だからこそ、『言葉は世界をつなぐ平和の礎』という本学の建学の理念が重要性を帯びてくるのです」と宮内学長は力を込める。40年以上、総合商社の第一線で世界を相手にビジネスをしてきたからこそ、その言葉は重い。やはり大切なのは言葉であり、人と人がコミュニケーションを交わす力なのだ。
他方で、宮内学長がビジネスで世界を駆けまわっていた時、日本人、特に若者たちが世界の同世代のなかで存在感の薄いことが気がかりだったという。自己肯定感が低く、生命力が不足しているように見えたのだ。しかし神田外語大学に来て、その憂いは消えた。
「学長就任前に、前学長とともに大学キャンパスを歩いたときのことです。本学の学生は屈託なく前学長に手をふり、当時、見ず知らずの私にも話かけてきてくれました」。その後も同じような光景に度々出会う、なかでも約40カ国の駐日大使や公使が神田外語大学を訪れた時のこと、「こんなにフレンドリーに日本人学生が話しかけてくる大学は初めてだ」と、誰もが驚きを口にしたのだ。
「教員の約半分が外国人だという環境や、少人数制クラスで語学が鍛えられていることが自信になっているのでしょう」。学生を誇らしく思うとともに、語学学習は自信をもたらす“人生の素敵な入り口―Beautiful entrance for your future”との思いを強くしたという。
AIに選択権をゆだねるのではなく使い倒せる人に。
AIが進化する今、語学を学ぶ意味を問い直す
近年の生成AIの進化によって、外国語習得の環境や目的も大きく変わると言われている。「確かにその点は否定できません。翻訳から通訳まで、相当な部分を生成AIに代行させることができるでしょう。私自身、ツールとして利用する、使い倒すことには賛成です」。生成AIの活用を評価する宮内学長だが、反面、その危険性も指摘する。
「AIはディープラーニング(深層学習)を積み重ねることで、複雑なパターンや特徴をくり返し学習していきます。そのため与えるデータによって、その答えを操ることが可能ともいえます。つまり、AI翻訳は恣意的な意訳によって容易に人をだますこともできるのです」
だからこそ、「本学で語学を学ぶ意義がある」と宮内学長は強調する。語学学習はとくに少人数のFace to Faceで学ぶことで、本当に理解しているかがわかると言われているからだ。
「確かに顔の表情を読み取るといったことは、画像認識技術によってAIの得意領域になるでしょう。しかし、受け答えの間や言葉の行間が意味すること、さらに、美しい、おいしいと感じる人間の感性、感情など、感覚的な領域をAIが読み取ることは難しい」
肝心なのはAIとどう付き合うかというスタンスだ。「AIを利活用しても、AIに主導権をゆだねないことが重要」と宮内学長は警鐘を鳴らす。
リベラルアーツやデータサイエンスで学びを深め、
グローバルな視野で本質的な課題解決ができる力を
AI技術の進化や複雑化する国際社会のなか、語学大学には、語学習得を入り口として、その先に何を学べるのか、どんな能力、技術を習得できるのかが問われている。
そうしたなか2021年に開設したのが、グローバルリベラルアーツ(GLA)学部だ。「平和構築をキーワードに掲げ、国連の国際機関やNGOなどで活躍できる人材を送り出したいと考えています」
GLA学部では、全学生に2回の海外留学を必須化。1年次の「海外スタディ・ツアー」でアジアやヨーロッパに数週間滞在し、そこでの発見や疑問をもとに大学での学びに生かす。
3年次にはニューヨーク州立大学に4カ月間留学し、世界中の学生と議論をしながら研究テーマを深めていく。キャリア・メンターによるキャリアサポートも特徴だ。
外国語学部では、2023年度から新カリキュラムを導入。統計や数的思考を取り入れたデータサイエンス、キャリアデザインなどの基盤教育の強化や、ゼミの必修化を敢行。「狙いは、言葉と文化を学び、語学力、理解力、解析力、思考力とともに、コミュニケーションを深める質問力を身につけ、クリティカルシンキング(批判的思考)を養うことです」
学長就任以来7年、様々な改革が実を結び、イギリスの教育専門誌『THE:Times Higher Education』による日本の大学ランキング調査では、私立大学の中で総合全国13位(全体47位タイ)、「教育充実度」では全国3位(全体5位)を獲得(2024年3月)。
しかし何よりも自慢できることとして、宮内学長は「学生の満足度」を挙げる。実に卒業生の約9割が「神田外語大で学んでよかった」と回答しているのだ。グローバル社会にふさわしい学びの環境が整う神田外語大学のリアルを、オープンキャンパスで確かめてほしい。
神田外語大学
宮内 考久学長