筑波大学の吉本尚准教授らの研究チームは、飲酒量を減らす対策として有効性が示されているノンアル飲料の提供が、飲酒問題が大きい人に対しては減酒効果が抑制されることを明らかにした。
研究チームは最近、成人を対象とした純アルコール摂取量(飲酒量)の推移を観察する試験により、ノンアル飲料の提供が飲酒量減少に有効であることを実証した。一方で、ノンアル飲料の提供はアルコール使用障害のある人の飲酒欲求を高めることが知られている。そこで今回、ノンアル飲料の提供が飲酒量に及ぼす影響について、アルコール使用障害同定テスト(AUDIT)で判定した問題飲酒の大きさの影響を検討した。AUDITは高得点ほど身体的・精神的な健康問題や社会的・職業的な機能障害、事故や怪我などのリスクが増大する。
研究では成人123人(20歳以上)を介入群と対照群に無作為に分け、介入群にノンアル飲料(アルコール濃度0.00%のアルコールテイスト飲料)を12週間提供した。AUDIT得点で4グループ(7以下、8~11、12~14、15以上)に分けて検討した結果、AUDIT得点が14点以下のグループでは介入群の飲酒量減少率を認めたが、15点以上のグループでは飲酒量の減少は認めなかった。また、介入群での平均飲酒量減少率については12点以上のグループで有意に抑制された。一方で、いずれのグループもノンアル飲料提供による飲酒量の増大は認めなかった。
この結果から、飲酒の問題が小さいとノンアル飲料提供による減酒効果が大きいが、飲酒の問題が大きいとノンアル飲料提供だけでは減酒効果に乏しく、医療従事者によるカウンセリングなどの有効なアプローチを組み合わせる必要があると指摘している。