北極振動と南極振動が同期して変動していることを、三重大学、北海道大学、新潟大学の研究グループが発見した。
北極上空には、北極全体を覆う巨大な低気圧があり、この低気圧が強弱を繰り返す現象のことを北極振動と呼ぶ。低気圧が強いときは風が反時計回りに速くまわり、弱いときには同じく反時計回りにゆっくりまわる。この風を偏西風(ジェット気流)と呼ぶので、北極振動は偏西風が強弱を繰り返す現象と言うこともできる。一方、南極上空でも、北極と同じように偏西風の回転が強弱を繰り返しており、これを南極振動という。
北極振動は、日本を含む北半球の広い範囲で厳冬や猛暑などの異常気象を引き起こす原因とされ、その予測は経済社会的な観点からも危急の課題だ。また、南極振動はオゾンホールと強い関連があり、地球環境にきわめて重要である。ところが、北極と南極は地理学的に互いに最も遠くに位置していることから、北極振動と南極振動の同期した変動を調べた研究は無かった。
その一方で、両者の関連性を示唆する研究もいくつか存在する。そこから「北極振動と南極振動はシンクロしているのではないか」という着想を得た本研究グループは、解析を行い、その結果、北極振動指数と南極振動指数に有意な正相関があることを発見した。すなわち、北極と南極の低気圧が同じように変化している可能性があり、これは北半球と南半球の偏西風の強弱の変化が一緒に起こっていると言い換えることもできる。
本研究は、日本の異常気象が遠い南極と関係を持つことを初めて示唆した研究といえる。原因の一つとして、上空のオゾン層が北極振動と南極振動の同期の仲立ちとなっていることが挙げられると研究グループは考えている。
論文情報:【GeophysicalResearch Letters】Interhemispheric synchronization between the AO and the AAO2