京都大学生態学研究センターの東樹宏和准教授、森林総合研究所の黒川紘子主任研究員、筑波大学山岳科学センターの田中健太准教授らの研究グループは、草原生態系の植物の葉や根に、膨大な種類の細菌と真菌が共生していることを見出した。
草原の生態系は生物多様性の宝庫である。多数の植物種、その植物を訪れる多様な昆虫、さらには、昆虫や小型哺乳類を捕食する鳥類・哺乳類が草原生態系を構成している。現在、日本各地で急速に草原が失われつつあるが、草原生態系が失われた際に、人類が何を失うのか、客観的に判断するためのデータが不足しているのが現状であった。
そこで、同研究グループは、植物の葉や根に共生する微生物の集まりを網羅的に分析するため、植物の種多様性が極めて高い長野県菅平高原において野外調査を実施し、33目137種の植物をサンプルとして収集した。植物に共生する細菌類(バクテリア)および真菌類(きのこ・かび・酵母)を「DNA メタバーコーディング」で分析したところ、7,991系統もの細菌および古細菌と5,099系統もの真菌が検出された。この中には、植物の成長を促進しうる微生物や、医薬品の原料物質を生産しうる微生物が多数含まれていた。さらに、日本での報告事例が極めて少ない菌もあった。
本成果は、草原生態系の中に、多数の有用資源が眠っていることを示唆するものである。この微生物データの蓄積により、機能性の高い資源を有効利用できると期待される。