私立大学の一般選抜前期試験が実施され、出願数の確定値が発表されています。一般選抜の志願者数は、上位大学では早いタイミングで公表されるため、週刊誌やネットでもランキングが出されることがよくあります。この志願者数の伸びを見て「大学の躍進」を感じている人も多いかと思います。

 2025年度入試の受験対象者である18歳人口は109万562人と昨年よりも2.5%増加、大学入学共通テストの志願者は、49万5171人と昨年よりも0.7%増加しています。そうなると一般選抜でも少なくとも昨年並みにはなりそうですが、全大学ではそうはなりません。

 ここ数年で、総合型選抜や学校推薦型選抜の比率が上がっているため、一般選抜の志願者数のアップダウンだけで、「大学の躍進」を測るのは難しい時代に入っています。分析するならば、偏差値上昇による志願者減や、隔年現象による志願者減も考慮する必要があります。

 それでは、高校・塾の先生など教育関係者は、どんなところで大学が「躍進している」と感じているのでしょうか。やはりイメージに一番大きい影響を与えているのは、学部の新設・改組・キャンパス移転・大きな入試改革・周年イベントなどの目立つ動きでしょう。このコラムでは、このような動きを連続して行っている大学をピックアップして紹介していきたいと思います。

 「大学の規模」「女子大学や専科大学などの括り」「キャンパスの立地」などの面から、学生募集が厳しいのは仕方がないという話も出ます。しかし、大学はやはり「教育・研究内容」が大切であり、「躍進している」イメージはどのような環境にあっても、しっかり教育改革している大学についてくるものなのです。

 

3年連続で学部学科の新設・改組している大学は、首都圏では実践女子、日本女子、芝浦工業、北里、国際医療福祉、東洋の6大学

 2013年度から5年間の学部の新設・改組・キャンパス移転・大きな入試改革・周年イベントを構想も含めて調べてみました。成長分野への国の支援もあるため、新設・改組はかなり多いのですが、連続して行う大学はあまり多くありません。2年連続で新設・改組等を行っている大学はいくつかありましたが、3年連続で行っている大学を調べてみると、首都圏では、実践女子大学、日本女子大学、芝浦工業大学、北里大学、国際医療福祉大学、東洋大学の6大学でした。

 3年連続で新設・改組等があるということは、全学部に係る学長や関係職員などは、長期間に渡り、強みの開発や募集施策などを休みなく考え続けなくてはいけないため、かなりの苦労があるのではと考えられます。ただ、18歳人口が急激に減少するのは、2035年頃となっており、あと10年しか時間がありません。その間に、国としても必要な制度改正や支援も行われていきますが、学生募集という観点だけでなく、未来の社会を支える学生が自ら主体的・自律的に学び、社会や世界に貢献していくための力を身に付けていくための変革は早く行うべきだと思います。これらの改革を連続して行えている大学は、「躍進している」という印象になり、長い目で見れば高校生の志願者獲得にも有利に働くものと考えられます。

 それでは、3年連続で動きがあった首都圏6大学(学科総数に対して新設・改組の割合が高い順)を紹介していきたいと思います。

① 実践女子大学 社会連携や就職に強みを持つ、渋谷と日野の2キャンパスの大学

 渋谷駅から徒歩10分にある渋谷キャンパス、緑豊かな日野キャンパスと対照的な2つのキャンパスを持つ女子大学。2014年には渋谷キャンパスに「創立120周年記念館」を新設。1Fには創立者であり女子教育の先覚者である下田歌子の資料室、卒業生で作家・脚本家の向田邦子の直筆原稿や遺品が展示されている。両キャンパスともに、社会連携プログラムが充実しており、企業や組織との連携は200を超えており、参加する学生も年間のべ7000名近くとなっている。2024年4月に国際学部(渋谷キャンパス)を新設、さらに同年に人間社会学部社会デザイン学科(渋谷キャンパス)を新設し定員増も行っている。2025年4月に環境デザイン学部(日野キャンパス)を新設、2026年4月に食科学部(日野キャンパス)を新設構想しており、3年連続の大きな動きとなっている。

② 日本女子大学 2027年度には8学部16学科となる構想で、新しい動きが目白押し

 創立120周年となる2021年4月より、西生田キャンパス(神奈川県川崎市)の人間社会学部を目白キャンパス(東京都文京区)に移転し、創立の地である目白に統合。私立女子大学で唯一理学部を設置し、文理融合の教育環境が整っているのも特徴。日本女子大学の卒業生であり世界的な建築家である妹島和世氏が設計した図書館が2019年に、新教室・研究棟が2021年に完成しており、キャンパス内も大きく変わってきている。学部学科については、2023年4月に国際文化学部を新設、2024年4月に建築デザイン学部を新設、2025年に食科学部を新設し、改組が3年連続となっており、さらに、2027年4月に経済学部を新設する構想もある。経済学部が新設されると8学部16学科となる。

③ 芝浦工業大学 工学部、システム理工学部ともに課程制導入、2027年までに女子学生比率30%を目指す

 文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援」に私立理工系大学で唯一採択され、世界水準の教育環境で学べ、留学などの制度も充実。就職にも強く、さまざまな就職率ランキングにおいても上位に入っている。創立100周年を迎える2027年までに女子学生比率30%以上とすることを目標として理工系女子特別入試を全学部の全学科・コースで実施。2024年4月に工学部(大宮キャンパス/芝浦キャンパス)で学科制から課程制に移行、2026年4月にシステム理工学部(大宮キャンパス)で学科制から課程制に移行すると同時に、入学定員を485名から705名に増加。課程制への移行は、「ひとつの分野のプロ」から「多岐にわたる知識やスキルを融合できるプロ」の輩出を目指すことになる。2025年4月にはデザイン工学部(芝浦キャンパス)を3コース制へ改組しており、3年連続で大きな動きとなっている。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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