寒い時期に受精(妊娠)して生まれた人は、熱を産生する褐色脂肪の活性が高く、肥満が起こりにくいことがわかった。東北大学、北海道大学、東京医科大学、天使大学、東京大学の共同研究グループが明らかにした。
褐色脂肪は、寒い環境下で熱を産生する脂肪組織であり、この熱産生には多量のエネルギーが使われ体脂肪の減少につながることから、褐色脂肪の活性が高い人ほど肥満が起こりにくく、生活習慣病のリスクも低いことが知られている。しかし、現状ではヒト褐色脂肪の人為的な活性化法の開発には至っていない。
今回、本研究グループは、若年成人男性356名を対象に、褐色脂肪の活性と被験者の受精日との関連を調べた結果、受精日が寒い時期だった被験者(寒冷受精群)は、暖かい時期だった被験者(温暖受精群)に比べて褐色脂肪の活性が高いことを見出した。また、別の成人男女286名を対象とした研究でも、寒冷受精群は温暖受精群よりも褐色脂肪密度が高いことを突き止めた。なお、出生時期と褐色脂肪との間には関連がなかった。
受精時の居住地の気象パラメータを解析した結果、外気温が低いことに加え、日内寒暖差が大きいことも、褐色脂肪の活性化に関与することがわかった。すなわち、受精前に親が低い外気温や大きい寒暖差に曝されると、その影響が世代を超えて子に伝わり、褐色脂肪の活性が決まるという。
さらに、受精前の親の寒冷曝露による褐色脂肪の調節が、肥満リスクにも関連することを見出した。寒冷受精群は、温暖受精群よりも日常生活下での総エネルギー消費量が多く、肥満度の指標である体格指数(BMI)と内臓脂肪量も低値を示したとしている。
本研究成果は、親世代の生活環境によって子が熱産生体質を獲得するという新たな仕組みを発見したことにより、これまでにない肥満予防法や生活習慣病予防法につながることが期待される。