畿央大学大学院の蓮井成仁氏(博士後期課程)と森岡周教授らを中心とする研究グループは、脳卒中後の自立歩行困難者における監視歩行獲得に関連する要因と、長下肢装具を用いた歩行トレーニングの「適応」と「限界」を明らかにした。
脳卒中者に対するリハビリテーションとして、下肢運動麻痺による体重支持困難者には長下肢装具(KAFO)を用いた歩行トレーニングが推奨されている。しかし、回復期病棟を退院する際に、介助なく歩行が可能となる症例とそうではない症例が混在しており、歩行回復に関連する要因については不明だった。
そこで、研究グループは脳卒中患者20名を対象に、身体機能評価に加えて理学療法中の歩数を評価した。対象者はKAFOを装着し、後方より理学療法士1名に支えられた条件下(介助歩行)で10m歩行を行った。
調査の結果、歩行トレーニング前における歩行中の麻痺側内側広筋への下降性神経出力の強さと監視歩行が可能となるまでの日数が有意に関係することを明らかにした。
さらに、監視歩行が獲得できた/できなかった症例に分類して、長下肢装具を用いた1ヶ月間の歩行トレーニング効果を確認。監視歩行獲得群では運動麻痺や体幹機能、バランス機能の改善と、麻痺側内側広筋の筋内コヒーレンスと理学療法中の歩数の増加を認め、介助歩行トレーニングの利得があった。監視歩行未獲得群では、運動麻痺のみ改善したが、その他の面では介助歩行トレーニングの利得が得られにくいことが分かった。
今回の研究成果が、監視歩行獲得群へのリハビリテーション効果の促進と、監視歩行未獲得群へのリハビリテーション戦略の開発進展に役立つことが期待されるとしている。