欧米の研究で一部の物質が有害とされるPFAS(人工的に作られた有機フッ素化合物)の妊娠中血中濃度と4歳児の発達について、エコチル調査北海道ユニットセンター(北海道大学)の伊藤真利子特任講師、岸玲子特別招聘教授らが関連を調べたところ、胎児期のPFASへのばく露と発達の遅れの間には関連が見られなかった。
研究グループは環境省の子どもの健康と環境に関する全国調査に協力した妊婦約1万5,000人の血液から28種のPFAS濃度を測定し、うちPFOS、PFOAなど8種を解析すると同時に、生まれた子どもの発達の度合いを5種類の発達領域(コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人・社会)で調べた。
その結果、8種のPFASとも子どもの発達に影響が見られず、PFAS混合物についても同様の結果が出た。ただ、今回調べた8種以外のPFASについては発達との関連が不明で、発達の遅れの評価は保護者の回答に基づくことから、専門家の診断と異なる可能性がある。このため、研究グループは研究がさらに進むことを期待している。
PFASは撥水撥油剤、界面活性剤、消火剤、調理器具のコーティング剤などに使用されているが、環境中で分解されにくい性質から、環境・生態系並びに人への影響が危惧されている。PFOS、PFOAの2種類が有害性を指摘され、環境省が2物質合計で水道水1リットル当たり50ナノグラムとする暫定目標値を設定したが、岡山県吉備中央町、岐阜県各務原市など14カ所で過去4年間に目標値を上回る数値が検出されている。