国立科学博物館、国立遺伝学研究所、東京大学など国内7研究機関11名からなる共同研究グループは、北海道の礼文島で発掘された縄文人の全ゲノム解読に成功した。北極圏の住民と同様に脂肪を分解しやすくする遺伝子の変異が見つかり、アシカなどを狩猟していた生活様式が遺伝子から裏付けられた。全ゲノムの解読により、日本人の起源を探る研究が加速しそうだ。
国立科学博物館によると、研究グループは礼文島の船戸遺跡から出土した約3,800年前の女性の臼歯からDNAを抽出し、高精度で解析した。その結果、この女性は脂っこい食事をしてもおなかを壊すことがないなど、高脂肪食を代謝しやすくする特徴を持っていた。
この特徴は狩猟をしなくなった現代の日本人にほとんど見られないが、イヌイットら現在も狩猟生活を送る北極圏の住民の約7割が持っている。遺跡から海獣の骨が発見されていることから、この女性を含むグループは礼文島で狩猟生活をしていたとみられる。
さらに、この女性は茶色の目をして髪の毛が縮れていたことも分かった。肌の色は濃かったと推定される。遺伝子からすると、韓国や台湾の先住民、フィリピン人に近いという。研究グループは東ユーラシア集団の中で最も古い時期に分岐した集団とみている。
縄文人は日本列島で1万6,000年前から3,000年前まで続いた縄文時代の狩猟民族。現代の日本人に遺伝子を伝えているが、東南アジア、北東アジアの両起源説が出ている。