東京大学と東京農工大学の研究グループは、海洋汚染で問題となっているマイクロプラスチック粒子がムール貝に取り込まれると、糞として排出されるまでの経時的パターンは粒子サイズによって異なることを発見した。
近年、マイクロプラスチックによる海洋汚染が世界的な問題となっている。その具体的な影響を受ける代表的な海洋生物にムール貝(ムラサキイガイ)がある。世界各地の沿岸に広く分布し、水中のマイクロプラスチックを誤食して体内に取り込み、魚や甲殻類などに捕食され、沿岸生態系へのマイクロプラスチック媒介者とされる。さらに、世界的な水産資源でもあるため、マイクロプラスチックを人の体内に持ち込む経路になっている可能性がある。
今回、ムール貝にマイクロプラスチック粒子を取り込ませ、その影響を精密に調べた。マイクロプラスチックのモデルとして、3種類(直径1µm、10µm、90µm)の大きさの蛍光標識したポリスチレンビーズを使用。その結果、飼育海水にどの大きさのビーズを懸濁させても、活発に取り込むことが判明。また、大きい粒子は糞として排出するまで時間がかかり、小さい粒子は素早く排出された。
一方、糞からビーズが一切検出されなくなるまでの期間を比較すると、粒子が小さいほど長い時間がかかった。これにより、小さい粒子は大部分素早く排出されるが、ごく少数の粒子が体内に長く残留して蓄積が進行し、大きい粒子よりも海水中の有機汚染物質を吸着する可能性がある。
大きさの異なる粒子の体内保持パターンの差により、その生理的影響も異なると予想される。今後、マイクロプラスチックの影響の解明には、粒子サイズに注意を払う必要があると指摘している。