東北大学、大阪大学、京都産業大学、ドイツケルン大学などの研究チームが、普通の超伝導体をトポロジカル超伝導体に変換する手法を開発した。
約10年前に発見されたトポロジカル絶縁体は、内部が絶縁体であるのに対し、そのエッジ(3次元の場合は表面、2次元の場合は端)には、固体中を質量ゼロで運動する「ディラック電子」に起因した伝導路が現れる。この発見を契機として、トポロジカル絶縁体の発展物質である「トポロジカル超伝導体」が注目されているが、未だ決定的な証拠はない。
トポロジカル超伝導を実現するためには、一般に「超伝導近接効果」が用いられる。例えば、トポロジカル絶縁体と超伝導体を接合した場合、超伝導体側からトポロジカル絶縁体側に、超伝導を担う電子対(クーパー対)が侵入することで、二つの物質の間の界面付近に存在するディラック電子が超伝導化される。しかしこの手法では、トポロジカル超伝導体のエッジ(端)に発現すると予言されている特殊な粒子「マヨラナ粒子」が物質内部の界面付近に埋もれてしまうため、その検出が難しく、トポロジカル超伝導体の決定的な証拠が得られないという課題があった。
こうした中、本研究者らは、トポロジカル絶縁体TlBiSe2の表面に普通の超伝導体であるPb(鉛)の超薄膜を作製し、その電子状態を調べた結果、もともとトポロジカル絶縁体の表面にあったディラック電子が接合によってPb表面に移動していることを発見した。さらに、Pb薄膜のエネルギー状態を測定すると、ディラック電子が超伝導になったことを示す「超伝導ギャップ」が観測され、普通の超伝導体であるPbがトポロジカル超伝導体に変化していることが見出された。
この成果は、超伝導近接効果を用いずともトポロジカル超伝導が実現できることを示唆するもので、今後、この系におけるマヨラナ粒子の検出が期待される。