国公立大学の確定志願者数が公表され、全体では昨年より約3万人の減少となりました。当初は前年並みの志願者数になると予想されていましたが、大学入試センター試験の平均点ダウンが影響したと言えるでしょう。一方、私立大学の志願者数も昨年までの増加傾向から一転して減少傾向となっています。しかし、こうした中でも、志願者数が10万人を超える大規模私大、“10万人倶楽部”は今年も健在です。また、志願者数が増加している大学の中には、「業務改革」が奏功している大学もあります。「安全志向」だけが2020年度入試のキーワードではありません。
大学入試センター試験の平均点ダウンでさらに手堅い受験行動に
大学入試センター試験の平均点のアップダウンは受験生に強い影響力を持っています。平均点がダウンすると個々の受験生の得点も目標値を下回っているため、より合格可能性が高い志望校に変更するなどの手堅い出願行動を取ります。逆に、平均点がアップすれば強気に希望通りの出願をするケースがほとんどです。また、影響は国公立大学だけでなく、併願している私立大学にも及びます。センター試験の平均点がダウンすると既に出願している私立大併願校だけでは合格に不安を感じ、慌てて追加で出願をする受験生が毎回のように見られます。さらに、多くの受験生は私大併願に当たっては、併願の負担がほぼないセンター利用方式に出願します。センター試験の平均点がダウンすると自身が見込んでいた「持ち点」もダウンすることから、センター利用方式での私大併願校の合格に黄信号が灯ります。そのため、より合格が確実な合格圏の私大併願校を追加で出願する行動につながります。
今年の入試は、入試制度改革が行われる2021年度(高大接続元年)入試を避けるため、より手堅い出願行動を取る受験生が多く見られますが、センター試験の平均点ダウンはこうした傾向により拍車をかけたと言えるでしょう。今年のセンター試験では、英語-7.0点、数学ⅠA-7.8点、数ⅡB-4.2点のダウンとなり、英語と数学を合わせて約20点の平均点ダウンとなっています。受験生によっては、他教科を含めてさらに点数が伸びず、思うような得点ができなかった生徒もいたことでしょう。今回の平均点ダウンは端的に言って理系生にダメージがありますので、特に理系生は合格がより確実な安全校の出願を追加で行ったケースが多かったのではないでしょうか。
志願者数10万人超えは、近畿大、日本大、早稲田大など6大学の見込み
今年の私大入試の志願者数は、受験生の手堅い出願行動によって、難関大学とそれに続く中堅大学で志願者数が減少していると推測されています。その影響で10年以上にわたって増え続けてきた私立大学の志願者数(延べ志願者数)が全体では前年比マイナス7~8%近くになる見込みです。
こうした各大学の志願者数の推移を確認できるサイトは複数ありますが、ここでは「大学通信ONLINE」の「2020年 入学志願者速報」に掲載されている数値から状況を見てみます。これによると、難関大学の志願者数は減少傾向が見られるものの、今年も10万人を超える規模の志願者を集めた私立大学が6大学あります。(表1)
近畿大、日本大、早稲田大、法政大、立命館大、明治大が2020年度入試で延べ数ながら10万人以上の志願者数を集めています。近畿大は6年連続して最多の志願者数ですが、今年も変わらず最多志願者数となることが見込まれます。立命館大は数年ぶりの10万人倶楽部への返り咲きとなりました。また、これまで3年間10万人以上の志願者数で推移してきた東洋は、調査時点では10万人には届いておらず、後期入試の志願者数の伸びによって10万人に届くかどうかという状況となっています。
ただ、18歳人口の減少に加え、大学志願率・高卒生の状況等を勘案すると、大学志願者は実人数で約1.5万人の減少となっていると推測されます。その中でも、10万人規模の志願者数を維持している大学があることは、パレートの法則が効いているとでも言えば良いのでしょうか(いわゆる勝者総取り)。
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