日本大と千葉工業大は志願者数が昨年より1万人以上の増加

こうした中で、志願者数が昨年より1万人以上の増加となったのは、日本大と千葉工業大です。日本大は昨年の入試で大きく志願者数が減少したことで倍率、難易度ともに低下しました。もともと伝統があり実力もある大学ですので、手堅い受験を考える生徒にとって、今年は非常に出願しやすい環境にあったことも影響しているでしょう。いわゆる「反動」、「隔年現象」です。この「反動」はここ数年の大きな特徴となっています。しかも、その振れ幅が年々大きくなっています。

さて、一方の千葉工業大ですが、各メディアなどでは「受験生の安全志向により、東芝電工(東京都市大、芝浦工業大、東京電機大、工学院大)を志望する受験生の併願先として増えた」と評されています。確かにそうした側面はあると思いますが、それだけではありません。そこには「業務改善」のための粉骨砕身の努力があるのです。

センター試験の平均点がダウンしたことによる追加出願については前述しましたが、受験生にとって私大併願校を追加で出願する際にまず問題となるのは「自己採点後でも出願が間に合う大学はどこか」ということです。今年の場合、自己採点集計後に各大学の予想ボーダー得点が速報されたのは1月22日(水)午後からです。そこから出願できる大学を探して、検討する時間は実はあまりないのが実情です。高校の先生、塾や予備校のチューター、保護者に相談する時間も考えると2日程度の余裕しかありませんが、この頃には多くの大学では、すでに出願が締め切られています。つまり、受験生にとってこの時期に出願できる大学はある程度限られているということです。

一方、出願を受け付ける大学側としては、受験生の利便性向上にため、できるだけ出願期間を長くしたいのですが、出願受付の手続き(出願書類の確認、受験票の発行など)に加えて、試験を実施する準備(試験会場および座席の設営、試験問題搬入など)があるため、試験実施日から逆算して、できるだけ早い時期に出願を締め切り、試験実施のための準備期間を長く取りたいのが本音です(中には、そんなに準備期間を長く取る必要もないだろうと思われる女子大などもあります)。

千葉工業大は試験前日まで出願可能、センター試験自己採点後でも日程に余裕

しかし、千葉工業大は試験日の前日まで出願を受け付けています。今年の場合、最も早いA日程の試験日が1月31日(金)ですが、その出願は前日の30日(木)11:00までとなっています。自己採点後に出願校の検討を始めた受験生にとって1週間以上の日数があります。実に有り難いのです。この他、2月17日(月)から実施されるB日程は16日(日)11:00まで、3月4日(水)からのC日程は3日(火)11:00まで出願が可能です。

中学入試でも試験前日の出願が可能な学校が限られる中、大学入試で試験前日の出願受付を実現していることは、まさにオペレーションのイノベーションと言っても過言ではありません。相当な努力を重ねて緻密な業務フローを確立していなければこのスケジュールの実現は難しいのです。こうした「業務改善」なくして、単なる「安全志向」で志願者数がここまで伸びることはありません。こうした地道な努力などにより、おそらく今後は10万人倶楽部の入口も視野に入ることでしょう。

参考:大学通信ONLINE「2020年 入学志願者速報」

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神戸 悟(教育ジャーナリスト)

教育ジャーナリスト/株式会社KEIアドバンス コンサルティング部 部員
/大学入試ライター・リサーチャー
1985年、河合塾入職後、20年以上にわたり、大学入試情報の収集・発信業務に従事、月刊誌「Guideline」の編集も担当。
2007年に河合塾を退職後、都内大学で合否判定や入試制度設計などの入試業務に従事し、学生募集広報業務も担当。
2015年に大学を退職後、朝日新聞出版「大学ランキング」、河合塾「Guideline」などでライター、エディターを務め、日本経済新聞、毎日新聞系の媒体などにも寄稿。その後、国立研究開発法人を経て、2016年より大学の様々な課題を支援するコンサルティングを行っている。KEIアドバンスは河合塾グループのため、膨大な入試データを活用したシミュレーションや市場動向調査が可能なこともあり、将来構想・中期計画策定、新学部設置、入試制度設計の支援など設置者を問わず多様な依頼が日々多く寄せられる。
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