京都府立医科大学と大阪大学の研究グループは、従来の救命処置で自己心拍が再開しなかった院外心停止患者に対して、体外循環式心肺蘇生を早期導入することが社会復帰率の向上に関連することを初めて示した。
体外循環式心肺蘇生とは、人工肺とポンプを用いて流入血液を酸素化する体外循環式の人工心肺装置による心肺蘇生法のこと。従来の心肺蘇生に反応しない心停止患者へのこの蘇生法の有用性が近年注目されているが、その適切な導入法については国際心肺蘇生ガイドライン上で大きな課題であった。
研究グループは、体外循環式心肺蘇生導入条件の中でも特に重要な条件となる低灌流時間(心肺蘇生時間が開始されてから十分な臓器血流が得られるまでの期間)に着目。さらに、この低灌流時間の影響について、別の重要な条件である蘇生中の心停止患者の心電図波形を考慮した解析を行った。
今回、大阪府下の救命救急センターと2 次救急病院の14施設による院外心停止患者登録の成人256名のデータ(2012~2016年)を使用。全患者につき体外循環式心肺蘇生開始までの低灌流時間を短時間群(24~45分)、中時間群(46~57分)、長時間群(58~117 分)に分けたところ、社会復帰割合はそれぞれ 22.0%(100人中22人)、17.1%(82人中14人)、6.8%(74人中5人)と早いほど良かった。また、その早期導入効果は心肺停止中に電気ショックの適応である心室細動(不整脈の一種)波形が持続する場合、また低灌流時間が長くなった場合に大きかった。
今回の研究結果は、限られた資源を適切なタイミングで導入する指標となり、院外心停止患者の蘇生率向上のためのエビデンスとして国際心肺蘇生ガイドラインの改定に寄与することが期待される。