近年、ジャックラッセルテリアという犬種において消化管ポリープの症例が増加しており、遺伝病である可能性が指摘されてきた。岐阜大学動物病院における診療や病理検査を通じて、この疾患の増加にいち早く気がついた同学のグループは、この疾患の病態解析を進めた結果、新たな遺伝病「遺伝性消化管ポリポーシス」を発見した。

 本グループは、消化管ポリープを罹患したジャックラッセルテリア21頭を解析し、胃および大腸に腫瘍性ポリープ(腺腫・腺癌)の発生を特徴とすること、また、多発性であること、若齢での発症がみられることなど、通常のイヌの消化管腫瘍とは異なる特徴も発見した。

 この病態が、ヒトの大腸に多数の腺腫性ポリープが発生する家族性大腸腺腫症に類似していることに着目した本グループは、家族性大腸腺腫症ががん抑制遺伝子であるAPC遺伝子の変異を原因とする優性遺伝病であることから、罹患犬においてもAPC遺伝子の解析を進めた。その結果、罹患犬に共通して認められるAPC遺伝子変異(生殖細胞系列変異)が同定され、この疾患が、ヒトの家族性大腸腺腫症に類似した優性遺伝病であることが判明した。

 罹患犬には特定のAPC遺伝子変異が認められるため、今後は遺伝子検査により正確な診断を下せるようになる。これによって、獣医師はより適切な治療を行うことが可能だ。また、繁殖の段階で遺伝子検査を行えば、遺伝病の発生制御も可能となるため、この遺伝病を減少させ、ひいては撲滅させることができる。

 さらに、研究分野では、イヌとヒトの遺伝病の比較から、消化管腫瘍の発生機序や修飾因子のさらなる解明につながることも期待できるとしている。

論文情報:【Carcinogenesis】Familial Adenomatous Polyposis in Dogs: Hereditary Gastrointestinal Polyposis in Jack Russell Terriers with Germline APC Mutations

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