千葉大学の小林弦矢准教授らの研究グループは、株式会社 Nospare と共同で、新型コロナウイルス感染症流行下での緊急事態宣言前後の感染症データを統計モデルにより解析。 その結果、感染流行の抑制には自粛施策の継続期間の維持と、特に終了後の感染率を低水準に保つことが重要と判明。さらに、緊急事態宣言の後では宣言前よりも感染率が40%から50%低下したと推定された。
新型コロナウイルス感染症対策のため、4月7日に日本政府は緊急事態宣言を発出。その後、新規感染者の増加は落ち着いたが、休業要請や外出自粛等により社会・経済は大きな打撃を受けた。今後の対応を考慮し、緊急事態宣言前後の人々の行動変容の効果や、宣言解除後の感染者数の推移予測が重要とされる。
研究では、「状態空間 SIR モデル」と呼ばれるモデルを用い、統計学的手法により解析した。解析には2020年3月1日から宣言発出2週間後の4月22日までと、その後の5月18日までの感染状況のデータを用いて同予測モデルを検証した。
その結果、介入施策の継続日数が短いと一定期間後に感染率が上昇し感染者数が再度増加する可能性があるが、施策終了後の感染率を抑制すれば今後の感染拡大の抑制が可能と示された。流行抑制には特に施策終了後も長期的に感染率を低水準にすることが重要と分かった。
また、介入後の感染率については、外出自粛等の施策による人々の行動変容により40%から50%ほど減少したと推定された。さらに、介入効果を考慮した感染者1人からの平均感染者数の推定値(実効再生産数)は 感染流行が収束するとされる値を下回り、緊急事態宣言下での外出自粛などによる行動変容には一定の効果があったことが推定された。